事例に学ぶ相続問題と対策のポイント

実際にあった相続トラブルの事例を通して、どこに落とし穴があったのか、どうすれば防げたのかを具体的に解説します。

このページの目次
  1. 事例 1
  2. 事例 2
  3. 事例 3
  4. 事例 4

事例 1

「遺産を長男に多く渡したい」という希望は、生前の話し合いと対策で叶える

ご相談内容

相談に来られたのは、60代後半の夫婦。長男は家業を手伝いながら同居中、次男は県外で会社勤めをしているとのこと。父親の意向は「長男には実家と土地を、次男にはわずかに残った現金を分けたい」というものでした。

問題点

このケースでは「長男に多く残したい」という想いと、「法定相続分は子ども2人で平等という制度の原則」の間にギャップがあります。次男が不満を感じ、遺留分侵害額請求を行えば、家を維持できなくなるおそれもあります。

想いの整理

両親の考えとしては「家を守ってくれる長男に相応の財産を遺したいが、次男との関係も壊したくない」というものでした。争いを防ぐことが大前提です。

対策内容

まず、公正証書遺言を作成し、長男に不動産を相続させる意思を明確に。また、次男の遺留分に相当する額は確保し、現金や保険金で対応できるように準備。遺言の存在も家族に伝え、生前にきちんと話し合う機会を設けました。

対応の効果

両親が元気なうちに家族で意見をすり合わせたことで、次男も納得。相続後も家族関係が良好に保たれ、長男は安心して家を引き継ぐことができました。

事例 2

親の施設入居後に揉めた「実家どうする問題」 “出口戦略” が分け道に!

ご相談内容

母親が要介護認定を受け、施設入居することになったタイミングで、3人きょうだいが相続について相談に来所。実家は空き家に。長女は「将来戻りたい」、長男は「売却した方がいい」、次男は「貸せばいいのでは」と意見が分かれていました。

問題点

不動産の扱いは、相続トラブルの定番テーマ。誰が使うか、誰が管理するか、維持費は誰が出すのか。生前に意思共有がないと、「住む/売る/貸す」の選択で揉めやすいのです。

想いの整理

母の希望は「誰かが使うなら残したい。でも迷惑はかけたくない」とのこと。相続人は「できれば母の気持ちも大事にしたいが、現実的な維持は難しい」という意見でした。

対策内容

母が入居する前に、家族で「実家の将来の活用方針」を共有。将来誰が使うか、貸すか、売るかといった出口を話し合い、仮に売却となった場合の分配方法まで合意。また生前中に売却する可能性も否定できないことから、母の意思能力がなくなってしまった場合に備えて、きょうだいを代表して長女を受託者とした信託契約を締結。

対応の効果

母も納得した上で施設に入居。施設入所後、母が脳血管疾患で倒れ意思能力を喪失。実家については、すでに方向性も決まっていたため、結託生前中に受託者である長女によってスムーズに売却手続きを進めることができました。

事例 3

突然の逝去で事業も家庭も大混乱 “見えない借金” に要注意

ご相談内容

相続人である長女からの相談。「父が急死し、会社の通帳と個人の通帳が混ざっていて、どこまでが相続対象かも分からない」とのこと。父は小規模な製造業を一人で切り盛りしており、帳簿も残されていませんでした。

問題点

中小企業経営者が突然亡くなった場合、個人資産と事業資産の境界があいまいであることが多く、負債が“見えないリスク”として残りやすいのが現実です。

悩みの内容

相続人は「会社を清算したいが、借金がいくらあるのか不明。プラスの資産があるなら相続したいが、リスクが大きすぎる」との不安を抱えていました。

対策内容

事業と個人の財産を仕分け。負債の全容が不明なため、「限定承認」という相続方法を提案。必要に応じて専門家による財産調査も実施。

対応の効果

結果的に、個人資産はプラスだったものの、事業は赤字。相続人は余計な負債を抱えずに済み、精神的にも安心して相続手続きを完了できました。

事例 4

相続人同士で連絡がとれない!ひとりの音信不通で、手続きが何年もストップ

ご相談内容

70代の母を看取った長女・Aさんからの相談は、「遺産分割協議がまったく進まない」というものでした。相続人はAさんのほか、次女Bさんと三女Cさんの3人。ところが、三女Cさんとは十数年来、連絡がとれていないとのことでした。

問題点

相続の手続きには「相続人全員の署名・実印・印鑑証明」が必要です。1人でも欠ければ、預貯金の解約や不動産の名義変更といった基本的な手続きは一切進みません。音信不通であっても「法定相続人」である以上、その協力が不可欠なのです。

想いの整理

AさんとBさんは、「相続の分け方については特に揉めたいわけではない」「Cにも自分と分けたい」との意向でした。ただし「このまま何年も手続きが止まってしまうのは避けたい」という想いも強く、できる限り穏便に解決したいとのことでした。

対策内容

まず、法務局を通じて戸籍謄本と住民票の調査を行い、Cさんの所在をできる限り特定するよう支援。その後、内容証明郵便にて遺産分割協議への参加依頼と協議書案を送付しました。連絡が取れなかった場合に備え、「不在者財産管理人」の選任申立ての準備も並行して行いました。

対応の効果

数か月後、Cさんからようやく連絡があり、「遺産の話には加わるが、直接のやりとりはしたくない」との反応。そこで、相続に詳しい専門家が間に入り、書面を郵送でやり取りする形式で協議を進行。最終的に全員の合意を得て、相続手続きを完了させることができました。

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